離職票のマイナポータルでの受け取り(2)

 退職された方が失業給付の受給に必要な離職票をマイナポータルで受け取るためには、三つの条件があります。

①雇用保険番号と個人番号が紐づいていること

➁マイナンバーカードを取得し、マイナポータルの利用手続きを行うこと

③会社が雇用保険の喪失手続きを電子申請で行うこと

 上記の条件を満たした場合は、自動的に離職票がマイナポータル経由で発行されます。退職される方や会社がハローワークに「マイナポータル経由で発行してほしい」などと連絡する必要はありません。

 会社側はマイナポータル経由で発行されたかは、発出された公文書で分かります。今までは会社に会社分の離職票と本人分の離職票が送られていましたが、マイナポータル経由の場合は会社に本人分の離職票が送られません。

 マイナンバーカードを取得し、マイナポータルの利用登録をすることは個人が行うことですが、残りの二つの条件は会社側が行うことになります。この制度を利用する場合の注意点について次回以降説明していきます。

シニア女性の採用と戦力化の成功(2)

 前回紹介したランドセルメーカーでは、同社の社長が以前教職に就いていた関係で定年退職した教員仲間に声をかけたところ手伝ってくれ、その後も仲間が別の元教員を誘ってくれ、徐々に増えていきました。

 担当者は「元学校の先生ですからランドセルを買いに来る子どもや父母の扱いは上手ですし、物覚えもいいし、本当に助かっています」と言います。また、「ランドセルの購入は新たに始まる6年間の節目のおめでたいイベントでもあり、とくに祖父母は一生に一つの孫への大事なものですからいいものを買ってあげたい。そんな祖父母の気持ちに同世代の彼女たちは寄り添って販売できるので、意欲的に働いてもらっています」とも言います。

 しかし、シニアスタッフも最初は販売に必要なパソコンスキルは不得手でした。毎年2月に販売スタッフ全員を集めた1日研修を実施し、新商品のランドセルの知識だけでなく、パソコンの操作方法やPayPayなどの決済方法についても学びます。リスキリングに積極的に取り組むことで、シニアスタッフが生き生きと働ける職場を実現しています。

シニア女性の採用と戦力化の成功

 人手不足解消の方策の一つして高齢者雇用が注目されています。業種によっては男性だけではなく女性シニアの活用も重要です。今回は定年後の女性を採用し培った経験を活かしているランドセルメーカーの事例を紹介します。

 この会社は創業60年を超えるランドセルの製造・販売を手がける会社です。販売スタッフのほとんどは60歳以上の女性で、最高齢は70歳になります。週2日からの勤務で、長期勤続の方も少なくありません。

 実は最初は販売員を募集してもなかなか集まらなかったそうですが、どのように活躍されるスタッフを探したのか、活躍できる環境を作ることができたのかを次回以降に見ていきましょう。

社内結婚を理由として異動命令の可否について(2)

 では、不利益な配置転換(人事異動)となるのはどのような場合かということになりますが、原則として、職務限定(経理のみなど)で採用した者でない限り、会社は人事権を有しており、広く配置転換を命ずることができます。会社が有効に配置転換を命ずるには、配置転換に関する事項を就業規則などに定めておく必要があります。配置転換に関する定め合理的なものであれば、就業規則の内容が労働契約の一部となり、会社は本人の同意を得ずとも、配置転換を命ずることができ、労働者はそれを正当な理由なく拒むことはできません。

 ただし、就業規則に配置・転勤条項の定めがあっても、個別具体的な配置転換命令が、権利濫用に該当すると判断される場合には、その配置転換命令が無効となる可能性があります。具体的には、

①業務上の必要性がないもの

②不当な動機・目的によるもの

③労働者に著しい不利益が生じるもの

 以上のいずれかに該当する場合には、人事権の濫用を問われて違法となり、配置転換が無効となる可能性があります。違法な配置転換を行った場合には、労働者から配置転換の無効を主張されることもあり、その主張が裁判等で認められた場合には、当該労働者を元の職種・場所で就業させなければなりません。男女雇用機会均等法に照らし慎重な判断をすべきです。

社内結婚を理由として異動命令の可否について

 社内結婚で夫婦が同じ部署にいると、周囲の気遣いや、本人たちの公私混同により支障が出ることなどを懸念して、いずれか一方に異動を命ずることはよくあります。しかし、明らかに「結婚」を理由とする人事異動に関しては、男女雇用機会均等法(略称)に照らしても問題があります。

 同法第6条では、労働者の配置(業務の配分および権限の付与を含む)について、労働者の性別を理由として、差別的取り扱いをしてはならないと定められています(第1号)。具体的には、主として次のような場合が差別的取り扱いに該当します。

  • 一定の職務への配置にあたって、その対象から男女のいずれかを排除すること。
  • 一定の職務への配置にあたっての条件を男女で異なるものとすること(例えば、女性だけ、婚姻したこと、子どもを有していることなどを理由に職務への配置の対象から排除することなど)。
  • 一定の職務への配置にあたり、能力および資質の有無などを判断する場合に、その方法や基準について男女で異なる取り扱いをすること。
  • 一定の職務への配置にあたり、男女のいずれかを優先すること。
  • 配置における権限の付与にあたり、男女で異なる取り扱いをすること。
  • 配置転換にあたって、男女で異なる取り扱いをすること(例えば、出向を女性のみに限定したり、女性のみ婚姻や子どもを有していることを理由に、通勤が不便な事業所に配置したりすることなど)。

 以上のことから、結婚を理由として女性のみに退職を強要したり、不利益な配置転換をすることは禁止されています。また厚生労働省が公表している「均等法Q&A」では、「職場結婚を理由に一方の性にのみ退職勧奨や配置転換を行うなど、配置等について男女で異なるものとすることは、均等法に違反します」としています。したがって、仮に今回の異動がこれまでの習慣通りであったとしても「結婚」のみを理由とするものであれば、本人の同意がない限り男女雇用機会均等法違反となります。

 不利益な配置転換とはどのようなものか、次回確認していきます。

 

離職票のマイナポータルでの受け取り

 2025年の1月20日から、離職票を事業主経由ではなくマイナポータルで離職者本人が受け取ることにできる制度が開始されました。これまでは、会社が雇用保険の喪失手続きを行い、ハローワークから離職票が会社に送られ、それを離職者に送る必要がありました。そのため、失業給付の手続きを会社から離職票が届くまでできませんでした。

 この制度を活用すれば会社からの離職票の送付を待つことなく失業給付の手続きに取り掛かれますので、離職者としてはこれまでよりも早く失業給付を受けることができるようになります。

 離職票のマイナポータル経由の受取にはいくつか条件があり、その準備を会社・離職者ともに行っておく必要があります。

新しい育児休業に係る給付金について(4)

 出生後休業支援給付金の申請についてまとめてみましょう。

・実子の生まれた男性が申請する場合は、申請書の「配偶者の状態」を記入して、母子健康手帳または医師の診断書を添付する。申請書に配偶者(母親)の雇用保険番号は記載しない。

・女性の申請で、配偶者(父親)が雇用保険の育児休業を取得している場合は、申請書に配偶者(父親)の雇用保険番号を記載する。住民票などの続柄の確認できる書類が必要。

・これ以外のケースは、個々に添付書類が異なるので要確認。

 育児休業の賃金登録を行う際に、同時に配偶者についても登録を行えば改めて出生後休業支援給付金の申請は必要ありません。賃金登録を行った際に配偶者についての登録を行わなかった場合は、育児休業給付の申請と同時に出生後休業支援給付金の申請も必要になりますので申請を忘れないようにしましょう。

 

新しい育児休業に係る給付金について(3)

 出生後休業給付金の申請には添付書類が必要になることがありますが、ケースにより必要な書類が異なります。

 まず、給付金を受けようとする方が父親で、かつ、子が養子でない場合は母子健康手帳(出生届出済証明のページ)または出産予定日の証明のある医師の診断書を申請書に添付します。これは配偶者が雇用保険に加入している場合でも変わりません。

 前回、「両親ともに育児休業を取得する場合は雇用保険番号からその情報を確認」できるとしましたが、父親で子が実子の場合、当然に配偶者に関する出生後休業給付金の要件に当てはまりますので母親の雇用保険番号の記載は必要なく、申請書の配偶者の状態(1~7のいずれか)を記載して、書類を添付することになります。

 わかりにくいかと思われますので、次回申請についてまとめます。

新しい育児休業に係る給付金について(2)

 前回説明した「出生後休業支援給付金」の対象となる方について、両親ともに育児休業を取得することが原則となりますが、一定の場合は配偶者が育児休業を取る必要はありません。

 例えば、配偶者がフリーランスで仕事をされる方のように雇用保険に加入していない場合や、お仕事をされていない場合などです。そのほかに配偶者がいない場合、被保険者(給付金を受ける方)が配偶者から暴力を受け別居している場合等が挙げられています。両親ともに雇用保険に加入している場合は、双方が育児休業を取得する必要がありますが、配偶者が雇用保険に加入していない場合は、この条件は必要ないということになります。

 両親ともに育児休業を取得する場合は雇用保険番号からその情報を確認できますが、配偶者の育児休業が給付金の要件でない場合は、配偶者がフリーランスであること、配偶者がいないことなどを証明する書類が申請時に必要になります。

新しい育児休業に係る給付金について

 2025年4月から育児休業について、雇用保険からの新しい給付金が創設されます。以前に説明した育児期間中の時短勤務に対する給付金と、今回説明する「出生後休業支援給付金」になります。

 この給付金は、共働き・共育てを促進するために出生直後の一定期間に両親ともに14日以上育児休業を取得した場合に、育児休業給付金に上乗せされて給付されるものになります。支給される金額は休業開始前の賃金の13%程度で、育児休業給付金の67%と合わせて休業前の賃金の80%となり、健康保険料と厚生年金保険料が免除されているため休業前の手取り額と同程度になります。

 ただし、受給できる期間は28日が上限と短くなっております。次回以降に対象となる方について説明していきます。

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