雇用保険番号を複数持っていて、個人番号が登録できない時の対処法(2)

 雇用保険番号を複数持っている場合の訂正の仕方は、ハローワークに「雇用保険被保険者資格取得等届訂正願」を提出します。これは電子申請はできず、ハローワークに紙で提出する必要があります。「統一事項」の誤(旧)の欄に古い雇用保険番号、正(新)の欄に新しい雇用保険番号を記入します。添付書類は雇用保険被保険者証など新旧の雇用保険番号が分かる書類になります。

 雇用保険番号を複数持っていることが分かっているが、その番号が分からない場合は、現在の分かっている雇用保険番号を正(新)の欄に記入し、余白や他の欄にこれまで務めたことのある社名を記載することで、統一の手続きを行えます。また、事業所ではなくご本人が直接ハローワークに行き、雇用保険番号の統一をすることもできます。この場合は古い雇用保険番号を確認できる書類はあるに越したことはありませんが、なくても問題ありません。

雇用保険番号に連携されていた個人番号は、雇用保険番号の統一を行っても自動で新しい番号に連携はされません。そのため、古い雇用保険番号に個人番号が連携されていた場合、新しい雇用保険番号に個人番号を連携する手続きが必要になります。

雇用保険番号を複数持っていて、個人番号が登録できない時の対処法

 雇用保険の被保険者にそれぞれ振り当てられる雇用保険番号ですが、複数の雇用保険番号を一人で持っている場合があります。入社時に会社側は雇用保険番号を確認し、その番号で雇用保険の資格取得を行いますが、自分が雇用保険に加入していたことを知らない方や失念している方は「雇用保険に加入したことはありません」と会社に言ってしまい、会社側が新規取得として手続きを進めることがあります。

 これは都道府県によって異なりますが、雇用保険の手続きを行うハローワークでは、その方が本当に雇用保険に加入したことがないかはあまり確認しません。その結果として同じ人が雇用保険番号を複数持つことが起こります。雇用保険番号取得の手続きが終わってから、いざその雇用保険番号と個人番号を連携させようとしても、同一の個人番号は異なる雇用保険番号と連携できないので、この時点で同一人物が複数の雇用保険番号を持っていることが判明します。

 このようなケースが起こった場合の対処法について、次回説明したいと思います。

事前許可制にした残業の超過分の支払いについて(2)

 事前の残業許可制を導入している場合、残業許可申請書に記載された時間と実際の残業時間に相違があると、労働者に不平不満が生じる場合があります。残業に対して事前許可制を採用している場合の裁判例では、「超過勤務自体、明示の業務命令に基づくものではなく、その日に行わなければならない業務が終業時刻までに終了しないため、やむなく終業時刻以降も残業せざるを得ないという性質のもの」、「休日出勤・残業許可願を提出せずに残業している従業員が存在することを把握しながら、これを放置していた」等の運用実態を認定して、残業手当の支払いを命じたものがあります(ゴムノイナキ事件、大阪高判、平17.12.1)。

 また、残業承認制がある会社で、承認されていなかった残業時間の存否が争われた事例では、裁判所「会社が労働者に対して所定労働時間内にその業務を終了させることが困難な業務量の業務を行わせ、労働者の時間外労働が常態化していたことからすると、係争時間のうち労働者が会社の業務を行っていたと認められる時間については、残業承認制に従い、労働者が事前に残業を申請し、会社代表者がこれを承認していたか否かにかかわらず、少なくとも黙示の指示に基づき就業し、その指揮命令かに置かれていたと認めるのが相当であり、割増賃金支払の対象となる労働時間に当たるというべきである」として、割増賃金の支払いを命じた事例もあります(クロスインデックス事件、東京地裁、平30.3.28)。

 残業手当を削減しようという意図のみをもって就業規則などで規制しても、実際の運用が適切でなければ無意味なものになります。時間外労働の管理は、たとえばタイムカード等を活用して客観的データに基づくこととし、次に就業規則で定めた事前許可制や承認制等の文書提出の徹底を図り、かつ、残業時間をどのように確認するかを定めて、適正に運用することが必要です。就業規則に規定するのみで会社が時間外労働の管理を適正に行っていなければ、申請した時間以外の残業についても割増賃金を支払う必要が生じる場合もあります。

 

事前許可制にした残業の超過分の支払いについて

 働き方改革のもとに、長時間労働の抑制や残業時間削減は、労働者の健康保持のために多くの企業で工夫がなされています。36協定(時間外労働および休日労働に関する協定)があっても協定違反とならないように、使用者として労働者の時間外労働(残業)については、適正な労働時間管理が求められます。したがって、残業に関しては、残業命令制、事前申請による残業許可制や事前申告による承認制を導入している会社が多くあります。しかし、いずれの制度も時間外労働の管理に関しては、残業に対する会社の管理・運用の厳格さが求められます。

 会社が厳しい労働時間管理を行っていたことを評価した裁判例があります。この会社は、残業について、就業規則上、時間外勤務は所属長が命じた場合に限り、所属長が命じていない時間外労働は認めないとするなど、厳格に運用していました。裁判所はその点を認定して残業代の請求を認めませんでした(ヒロセ電機事件、東京地裁、平25.5.22)。

 また、残業禁止命令に係る裁判例もあります。従業員が、残業禁止の業務命令が出ているにもかかわらず残業をして、その手当を請求した事件で裁判所は、「使用者の明示の業務命令に反して、労働者が時間外または深夜にわたり業務を行ったとしても、これを賃金算定の対象となる労働時間と解することはできない。会社はこの業務命令を徹底させていた」と判断しました(神代学園ミューズ音楽院事件、東京高判、平17.3.30)。

雇用保険番号と個人番号の紐づけについて

 退職者が離職票をマイナポータル経由で受け取るためには雇用保険番号と個人番号が連携されている必要があります。雇用保険の資格取得届に個人番号を記載していれば、基本的には雇用保険番号と個人番号が連携されます。ただし、いくつか例外のパターンがあります。

 誤った個人番号を記載した場合や、違う雇用保険番号に個人番号が登録されていた場合は取得届に個人番号を記載しても連携がされません。この際に注意が必要なのは発行された通知書に「個人番号登録あり」と記載されていた点です。ハローワークでは資格取得届に個人番号が記載されていた場合、「個人番号登録あり」と印字されていました。雇用保険番号への個人番号の登録は取得手続きが完了した後に行われるため、通知書に「個人番号登録あり」と印字されていても、実際には連携されていないケースがあります。

 なお、この「個人番号登録あり」の印字ですが、令和7年1月から記載されなくなりましたので、これから取得届を提出する場合は登録されていないにも関わらず「登録あり」と記載される紛らわしいことは起こらなくなりました。

 被保険者でしたら自分の雇用保険番号と個人番号が連携されているかマイナポータルから確認できます。会社が確認する場合は、雇用保険事業所台帳をハローワークから取り寄せることになります。印刷されたものを受け取ることも可能ですし、CSVデータとして受け取ることも可能です。事業所台帳の個人番号欄が「1」となっている人は雇用保険番号と個人番号が連携されていることになります。

離職票のマイナポータルでの受け取り(2)

 退職された方が失業給付の受給に必要な離職票をマイナポータルで受け取るためには、三つの条件があります。

①雇用保険番号と個人番号が紐づいていること

➁マイナンバーカードを取得し、マイナポータルの利用手続きを行うこと

③会社が雇用保険の喪失手続きを電子申請で行うこと

 上記の条件を満たした場合は、自動的に離職票がマイナポータル経由で発行されます。退職される方や会社がハローワークに「マイナポータル経由で発行してほしい」などと連絡する必要はありません。

 会社側はマイナポータル経由で発行されたかは、発出された公文書で分かります。今までは会社に会社分の離職票と本人分の離職票が送られていましたが、マイナポータル経由の場合は会社に本人分の離職票が送られません。

 マイナンバーカードを取得し、マイナポータルの利用登録をすることは個人が行うことですが、残りの二つの条件は会社側が行うことになります。この制度を利用する場合の注意点について次回以降説明していきます。

シニア女性の採用と戦力化の成功(2)

 前回紹介したランドセルメーカーでは、同社の社長が以前教職に就いていた関係で定年退職した教員仲間に声をかけたところ手伝ってくれ、その後も仲間が別の元教員を誘ってくれ、徐々に増えていきました。

 担当者は「元学校の先生ですからランドセルを買いに来る子どもや父母の扱いは上手ですし、物覚えもいいし、本当に助かっています」と言います。また、「ランドセルの購入は新たに始まる6年間の節目のおめでたいイベントでもあり、とくに祖父母は一生に一つの孫への大事なものですからいいものを買ってあげたい。そんな祖父母の気持ちに同世代の彼女たちは寄り添って販売できるので、意欲的に働いてもらっています」とも言います。

 しかし、シニアスタッフも最初は販売に必要なパソコンスキルは不得手でした。毎年2月に販売スタッフ全員を集めた1日研修を実施し、新商品のランドセルの知識だけでなく、パソコンの操作方法やPayPayなどの決済方法についても学びます。リスキリングに積極的に取り組むことで、シニアスタッフが生き生きと働ける職場を実現しています。

シニア女性の採用と戦力化の成功

 人手不足解消の方策の一つして高齢者雇用が注目されています。業種によっては男性だけではなく女性シニアの活用も重要です。今回は定年後の女性を採用し培った経験を活かしているランドセルメーカーの事例を紹介します。

 この会社は創業60年を超えるランドセルの製造・販売を手がける会社です。販売スタッフのほとんどは60歳以上の女性で、最高齢は70歳になります。週2日からの勤務で、長期勤続の方も少なくありません。

 実は最初は販売員を募集してもなかなか集まらなかったそうですが、どのように活躍されるスタッフを探したのか、活躍できる環境を作ることができたのかを次回以降に見ていきましょう。

社内結婚を理由として異動命令の可否について(2)

 では、不利益な配置転換(人事異動)となるのはどのような場合かということになりますが、原則として、職務限定(経理のみなど)で採用した者でない限り、会社は人事権を有しており、広く配置転換を命ずることができます。会社が有効に配置転換を命ずるには、配置転換に関する事項を就業規則などに定めておく必要があります。配置転換に関する定め合理的なものであれば、就業規則の内容が労働契約の一部となり、会社は本人の同意を得ずとも、配置転換を命ずることができ、労働者はそれを正当な理由なく拒むことはできません。

 ただし、就業規則に配置・転勤条項の定めがあっても、個別具体的な配置転換命令が、権利濫用に該当すると判断される場合には、その配置転換命令が無効となる可能性があります。具体的には、

①業務上の必要性がないもの

②不当な動機・目的によるもの

③労働者に著しい不利益が生じるもの

 以上のいずれかに該当する場合には、人事権の濫用を問われて違法となり、配置転換が無効となる可能性があります。違法な配置転換を行った場合には、労働者から配置転換の無効を主張されることもあり、その主張が裁判等で認められた場合には、当該労働者を元の職種・場所で就業させなければなりません。男女雇用機会均等法に照らし慎重な判断をすべきです。

社内結婚を理由として異動命令の可否について

 社内結婚で夫婦が同じ部署にいると、周囲の気遣いや、本人たちの公私混同により支障が出ることなどを懸念して、いずれか一方に異動を命ずることはよくあります。しかし、明らかに「結婚」を理由とする人事異動に関しては、男女雇用機会均等法(略称)に照らしても問題があります。

 同法第6条では、労働者の配置(業務の配分および権限の付与を含む)について、労働者の性別を理由として、差別的取り扱いをしてはならないと定められています(第1号)。具体的には、主として次のような場合が差別的取り扱いに該当します。

  • 一定の職務への配置にあたって、その対象から男女のいずれかを排除すること。
  • 一定の職務への配置にあたっての条件を男女で異なるものとすること(例えば、女性だけ、婚姻したこと、子どもを有していることなどを理由に職務への配置の対象から排除することなど)。
  • 一定の職務への配置にあたり、能力および資質の有無などを判断する場合に、その方法や基準について男女で異なる取り扱いをすること。
  • 一定の職務への配置にあたり、男女のいずれかを優先すること。
  • 配置における権限の付与にあたり、男女で異なる取り扱いをすること。
  • 配置転換にあたって、男女で異なる取り扱いをすること(例えば、出向を女性のみに限定したり、女性のみ婚姻や子どもを有していることを理由に、通勤が不便な事業所に配置したりすることなど)。

 以上のことから、結婚を理由として女性のみに退職を強要したり、不利益な配置転換をすることは禁止されています。また厚生労働省が公表している「均等法Q&A」では、「職場結婚を理由に一方の性にのみ退職勧奨や配置転換を行うなど、配置等について男女で異なるものとすることは、均等法に違反します」としています。したがって、仮に今回の異動がこれまでの習慣通りであったとしても「結婚」のみを理由とするものであれば、本人の同意がない限り男女雇用機会均等法違反となります。

 不利益な配置転換とはどのようなものか、次回確認していきます。

 

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