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離職票のマイナポータルでの受け取り
2025年の1月20日から、離職票を事業主経由ではなくマイナポータルで離職者本人が受け取ることにできる制度が開始されました。これまでは、会社が雇用保険の喪失手続きを行い、ハローワークから離職票が会社に送られ、それを離職者に送る必要がありました。そのため、失業給付の手続きを会社から離職票が届くまでできませんでした。
この制度を活用すれば会社からの離職票の送付を待つことなく失業給付の手続きに取り掛かれますので、離職者としてはこれまでよりも早く失業給付を受けることができるようになります。
離職票のマイナポータル経由の受取にはいくつか条件があり、その準備を会社・離職者ともに行っておく必要があります。
新しい育児休業に係る給付金について(4)
出生後休業支援給付金の申請についてまとめてみましょう。
・実子の生まれた男性が申請する場合は、申請書の「配偶者の状態」を記入して、母子健康手帳または医師の診断書を添付する。申請書に配偶者(母親)の雇用保険番号は記載しない。
・女性の申請で、配偶者(父親)が雇用保険の育児休業を取得している場合は、申請書に配偶者(父親)の雇用保険番号を記載する。住民票などの続柄の確認できる書類が必要。
・これ以外のケースは、個々に添付書類が異なるので要確認。
育児休業の賃金登録を行う際に、同時に配偶者についても登録を行えば改めて出生後休業支援給付金の申請は必要ありません。賃金登録を行った際に配偶者についての登録を行わなかった場合は、育児休業給付の申請と同時に出生後休業支援給付金の申請も必要になりますので申請を忘れないようにしましょう。
新しい育児休業に係る給付金について(3)
出生後休業給付金の申請には添付書類が必要になることがありますが、ケースにより必要な書類が異なります。
まず、給付金を受けようとする方が父親で、かつ、子が養子でない場合は母子健康手帳(出生届出済証明のページ)または出産予定日の証明のある医師の診断書を申請書に添付します。これは配偶者が雇用保険に加入している場合でも変わりません。
前回、「両親ともに育児休業を取得する場合は雇用保険番号からその情報を確認」できるとしましたが、父親で子が実子の場合、当然に配偶者に関する出生後休業給付金の要件に当てはまりますので母親の雇用保険番号の記載は必要なく、申請書の配偶者の状態(1~7のいずれか)を記載して、書類を添付することになります。
わかりにくいかと思われますので、次回申請についてまとめます。
新しい育児休業に係る給付金について(2)
前回説明した「出生後休業支援給付金」の対象となる方について、両親ともに育児休業を取得することが原則となりますが、一定の場合は配偶者が育児休業を取る必要はありません。
例えば、配偶者がフリーランスで仕事をされる方のように雇用保険に加入していない場合や、お仕事をされていない場合などです。そのほかに配偶者がいない場合、被保険者(給付金を受ける方)が配偶者から暴力を受け別居している場合等が挙げられています。両親ともに雇用保険に加入している場合は、双方が育児休業を取得する必要がありますが、配偶者が雇用保険に加入していない場合は、この条件は必要ないということになります。
両親ともに育児休業を取得する場合は雇用保険番号からその情報を確認できますが、配偶者の育児休業が給付金の要件でない場合は、配偶者がフリーランスであること、配偶者がいないことなどを証明する書類が申請時に必要になります。
新しい育児休業に係る給付金について
2025年4月から育児休業について、雇用保険からの新しい給付金が創設されます。以前に説明した育児期間中の時短勤務に対する給付金と、今回説明する「出生後休業支援給付金」になります。
この給付金は、共働き・共育てを促進するために出生直後の一定期間に両親ともに14日以上育児休業を取得した場合に、育児休業給付金に上乗せされて給付されるものになります。支給される金額は休業開始前の賃金の13%程度で、育児休業給付金の67%と合わせて休業前の賃金の80%となり、健康保険料と厚生年金保険料が免除されているため休業前の手取り額と同程度になります。
ただし、受給できる期間は28日が上限と短くなっております。次回以降に対象となる方について説明していきます。
副業を認めている会社の従業員が就業中に怪我をした場合どのように対応すべきか(2)
給付基礎日額は、労働基準法の平均賃金に相当し、毎月の支払われた賃金の総額を基に計算する日額をいいます。具体的には、原則として業務上または通勤途上における負傷等の原因となった事故が発生した日(算定事由発生日)の前3箇月に被災労働者に対して支払われた賃金の総額(ボーナスや臨時に支払われる賃金を除く)を、その期間の総暦日数で除した1日あたりの額となります。ただし、賃金締切日が定められているときは、算定事由発生日直前の賃金締切日から3箇月間に支払われた賃金総額を、その期間の総暦日数で除して算出します。
しかし、複数事業所勤務労働者の場合、算定事由が発生した会社のみ給付基礎日額を算定すると、副業・兼業先についても休業して稼得能力を喪失しているにもかかわらず、給付基礎日額は低額なものになってしまいます。そこで、複数事業所勤務労働者に係る給付基礎日額の算定においては、原則として、算定事由発生日前3箇月間に支払われたそれぞれの就業先事業場から支払いを受けた賃金を合算し、その総額を基に給付基礎日額を算定して休業補償給付〈休業給付〉の額が決定されます。ただし、算定事由発生日において既に副業・兼業先の事業場を離職していて、算定事由発生日から前3箇月間に一部期間しか就業実態がないような場合は、その一部期間に支払われた賃金額を基に算定します。
なお、休業補償給付〈休業給付〉には3日間の待期期間があり、その間は支給されません。ただし、業務上災害の場合、災害発生の会社には当該待期期間について労働基準法上の補償義務(1日につき平均賃金の60%)があります。
副業を認めている会社の従業員が就業中に怪我をした場合どのように対応すべきか
労災保険は労働者が業務上や通勤途上のおける負傷、疾病、障害、死亡(負傷等)に対して、必要な保険給付を行います。災害発生時に事業主が異なる2つ以上の複数の会社と雇用契約関係にある労働者(複数事業所勤務労働者)に発生した業務災害または通勤災害に関しても必要な保険給付は行われます。副業や兼業で複数の会社に勤務する場合、いずれか一つの会社の仕事で起きた業務上災害や通勤災害が原因で休業する際の補償はどうなるでしょうか。
業務上または通勤災害での療養のため、労務不能となって会社を休んだときは、休業補償給付〈休業給付〉が支給されます(〈〉内は通勤災害に係る給付。以下同)。休業補償給付〈休業給付〉は、原則として、働いていた会社から支払われる賃金を基に保険給付の額が決まります。しかし、複数事業所勤務労働者については、業務上災害や通勤災害が発生した会社での賃金を基に保険給付の額を決定するのではなく、雇用されているすべての会社等から支払われているそれぞれの賃金の合計額を基に保険給付の額が決められることになります。
労災保険の保険給付には、現金給付で支給される休業補償給付〈休業給付〉、傷病補償年金〈傷病年金〉、障害補償年金〈障害年金〉、遺族補償年金〈遺族年金〉、葬祭料〈葬祭給付〉があります。これらの保険給は、給付基礎日額(保険給付の基礎となる日額)を基に決定されます。複数事業所勤務労働者については、それぞれの就業先の事業場で支払われている賃金の合算額を基礎として給付基礎日額が決定されることになります。
次回は給付基礎日額についてと、複数事業所勤務労働者の場合について確認します。
諸手当を縮小し、基本給に組み入れることで割増賃金はどう変わるのか
厚生労働省は、企業の配偶者手当見直しのフローチャートで、配偶者(家族)手当の廃止(縮小)と基本給の増額などをセットにした具体例を示しています。
家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当などが割増賃金の計算から除外されていますので、家族手当等の除外賃金を減額、廃止して基本給に組み入れれば、その分割増賃金の単価が増えることになります。
家族手当等を減額するとして、除外賃金に該当するかどうかは実質的に判断されることに注意が必要です。家族手当に関しては、均衡上独身者にも支給されていたり、家族数と無関係に一定額支給されるものは除外賃金に該当しません。
住宅手当についても、持家・鎮台の別や住宅ローン・家賃の額といった個別的事情を反映した金額が支給されていない場合は、除外賃金には含まれないと解されています。
うつ病で休職・復職を繰り返す従業員の解雇の可否(3)
前回最後に触れたK社事件は、躁うつ病で休職していた従業員が一旦復職したものの、復職後の欠勤が目立ち、症状が再発したため、会社は当該労働者を「精神または身体の障害もしくは病弱のため、業務の遂行に甚だしく支障があるときと認められたとき」等の就業規則上の解雇事由により解雇したものです。しかし、就業規則上、同一理由による再度の休職も予定され、休職期間は最大2年とされていました。
判決は、解雇の先立ち会社が原告主治医に助言を求めた形跡がないことや、就業規則上再度の休職も可能であり、再休職を検討することが相当であること、会社は原告のほかに病気で通常勤務できない者2名の雇用を継続しており、原告のみ解雇することは平等取り扱いに反することも解雇権濫用であるとしています。
休職について、通算規定や回数の限度を定めていない会社も多くあります。この場合、与えられた休職期間を超えない限り、回数を問わず休職できることになります。
うつ病で休職・復職を繰り返す従業員の解雇の可否(2)
うつ病等の精神疾患を理由とする休職の場合は、復職したものの再発して再休職となることが多いのが実情です。しかし、休職・復職を繰り返す場合であっても、労務提供の可能性を勘案し、解雇等の判断は慎重に行う必要があります。
そこで、まず就業規則にどのように定めているかの確認をする必要があります。例えば、「私傷病による休職期間は6カ月とする。ただし、休職期間満了前に復職し、その後3カ月以内に同一または類似の傷病等で休職した場合は前後休職期間を通算し、当該通算期間の満了によって自然退職とする」というようの定めていたとします。
この場合は、休職・復職を繰り返したとしても規定の範囲内であれば、休職期間が通算6カ月に達するまでは退職させることはできません。仮に解雇するにしても、残りの休職期間を適用しても回復の見込みが認められない、とならない限りは解雇権の濫用として解雇無効となる可能性が高くなります。
裁判例でも、再度の休職が可能であったにもかかわらず、主治医の意見を聞かずになされた躁うつ病の再発を理由とする解雇が無効とされたケースがあります(K社事件:東京地裁平成17年2月18日判決)。