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会社都合退職と離職票の見方(5)
離職区分の詳細は次のようになります。
1A…解雇
1B…天災その他やむを得ない理由による解雇
2A 特定雇止めによる離職(雇用期間3年以上雇止め通知あり)
2B 特定雇止めによる離職(雇用期間3年未満等更新明示あり)
2C 特定理由の契約期間満了による離職(雇用期間3年未満等更新明示なし)
2D 契約期間満了による離職
2E 定年、移籍出向
3A 事業主からの働きかけによる正当な理由のある自己都合退職
3B 事業所移転に伴う正当理由のなる自己都合退職
3C 正当な理由のある自己都合退職
(3D 現在は使われていない離職区分)
4D 正当な理由のない自己都合退職
5E 被保険者の責めに帰すべき重大な理由による解雇
上記の離職区分で、喪失原因が「3」になるのは原則として「1A」と「3A」になります。「1A」の場合は例外なく喪失原因は「3」となり、離職区分が「3A」の場合は喪失原因が「2」になることも「3」になることもあります。
会社の手続きした離職理由と離職者の考える離職理由が異なるときは、会社側の記載に基づいて離職区分が判断されます。その後、離職者が離職票に記載されている離職理由が誤っていると思うときは、ハローワークに異議申し立てをして訂正が必要かハローワークの判断するところとなります。
次回間違えやすい離職区分について説明します。
会社都合退職と離職票の見方(4)
会社都合の退職にあたる喪失原因と離職の失業給付の資格に係る離職区分が別であることに前回触れました。
手続きをした離職票の離職区分がどのように扱われたかは、日数や賃金額が記載されている離職票2の右端で確認できます。複数の離職区分にチェックが入っている場合は、その二つの離職区分のどちらに当たるか判断がつかないため、離職者から具体的事情を聞いた後に正式な離職区分が決定されます。
実際のケースでは「2C」又は「2D」の組み合わせと「3C」又は「4D」組み合わせになるかと思います。なお、この組み合わせでどちらが選択されても喪失原因が変更されることはありません。
それでは離職区分について解説していきます。おおまかな区分として、1で始まるのは解雇、2は契約期間の満了、3は正当な理由のある自己都合となります。
1~3はAから始まっていますが、4は4Dの「正当な理由のない自己都合退職」、5は5Eの重責解雇のみとなっています。
離職区分の細かい違いを次回確認していきます。
会社都合退職と離職票の見方(3)
離職区分は喪失原因より細かい離職の理由ごとに「1A」~「5E」に分類されています。「1A」は解雇、「2E」は定年などとなっており、離職区分が「1A」から喪失原因は「3」、「2E」なら喪失原因が「2」などと関連付けられています。
「会社都合で辞めた場合は失業給付がすぐに貰える」などといった記事をご覧になったことがある方もいらっしゃるかと思いますが、失業給付に関わってくるのはこの離職区分になります。本来の会社都合の退職を意味する喪失原因は失業給付については影響しません。
したがって、喪失原因「2」=自己都合退職で離職区分が「3C」=正当な自己都合退職として会社都合で離職した方と同じ内容の失業給付を受けるケースなどが発生します。
会社側にとっての会社都合である喪失原因と、離職者にとっての給付に係る離職区分は別であることを理解しておきましょう。
会社都合退職と離職票の見方(2)
離職票の喪失原因は「1」~「3」の3種類に分類されます。
喪失原因の「1」は離職以外の理由により雇用保険の資格を喪失した場合になります。具体的には被保険者が死亡した場合と在籍出向にあたります。
喪失原因の「2」は喪失原因の「1」と「3」以外のものと定められています。いわゆる自己都合の退職や定年、契約期間の満了による退職などが喪失原因の「2」に該当します。
間違えやすいのは契約内容を変更して週20時間になったことにより資格を喪失した場合です。労働時間が短くなって雇用保険の資格は喪失しますが、離職したわけではないからと喪失原因を「1」とするのは誤りです。雇用保険のルールでは、雇用保険の資格を喪失することを離職と呼んでいますので、事業主の都合によらない離職として喪失原因「2」となります。
そして、喪失原因の「3」が事業主の都合による離職となります。具体的には解雇、退職勧奨に応じた場合等になります。
喪失原因がどのように処理されたかは、手続き後に交付される資格喪失確認通知書の喪失原因の欄に「1」~「3」のいずれかが記載されます。
ここで注意したいのが、離職区分という別の区分が存在することです。この離職区分について、次回確認します。
会社都合退職と離職票の見方
雇用関係の助成金では、会社都合の退職者を出すと支給対象から外れることがあります。このこと自体はご存じの方も多いかと思いますが、この「会社都合の退職」が具体的にどのようなものかがはっきり分からないという方も多いのではないでしょうか。離職証明書の見方などを通して、雇用保険上の「会社都合の退職」がどのようなものかをはっきりさせたいと思います。
まず、助成金の支給要領を確認しましょう。助成金の種類によって多少違いはありますが、おおむねこのように書かれています。
「支給対象者を、支給申請日までに事業主都合で解雇等(退職勧奨を含む。)していないこと。」
「なお、解雇等とは(中略)雇用保険被保険者資格喪失の確認の際に喪失原因が「3」とされるものである」
つまり会社都合、事業主都合などといろいろな呼び方はありますが、正確には「雇用保険の資格喪失の際に、喪失原因が「3」になる退職」のことを会社都合の退職などと呼んでいることになります。
では、この喪失原因とは何かを次回詳しく見ていきます。
休日出勤を命じた社員がその日に年次有給休暇を請求した場合、その請求は有効なのか(2)
次に、年次有給休暇についてですが、年次有給休暇とは「労働日において労働義務を免除するもの」であり、労働者の勤務形態や勤続年数に応じて、一定の日数を与えなければなりません。したがって、労働義務のない所定休日に年次有給休暇を申請する余地はありません。休日出勤を命じられたとはいえ、休日と定められた日はあくまで「休日」であり、「労働日」に代わったとの解釈は成立しないのです。
また、年次有給休暇の発生要件として、全労働日の8割以上出勤していることが求められます。この「8割以上出勤」を判断するときの分母となる「全労働日」とは、労働義務が課せられている所定労働日のことであり、就業規則等で定めた休日を除いた日数のことです。所定休日に労働させた日は含みません。したがって、休日出勤した日は労働日ではないことになります。
以上のことから、会社として休日出勤を命じた日に年次有給休暇の取得請求を受け入れる義務はありません。
業務上必要な休日出勤に係る業務命令に対して正当な理由なくこれに従わない場合であれば、就業規則に照らして懲戒処分の対象とすることができます。ただし、懲戒処分を行う場合には、前述のとおり、会社としての休日出勤命令の妥当性や、労働者が拒否した理由の正当性等を十分に確認したうえで行う必要があります。 休日に働かせるわけですから、休日労働には、通常の残業にも増して、前日のような高度の必要性が要求されます。
休日出勤を命じた社員がその日に年次有給休暇を請求した場合、その請求は有効なのか
労働基準法では、「使用者は、労働者に対して、毎週少なくとも1回の休日、または4週を通じ4日以上の休日を与えなければならない」(第35条)と定めており、これを法定休日といいます。しかし、会社は就業規則や労働協約、個別の労働契約により国民の祝日や法定休日を上回る休日を定めているのが一般的です。いずれの休日も会社が定める所定休日であり、当該休日については労働者は労働から解放され労働義務がない日となります。
本来、会社の定める所定休日は労働の義務がない日ですから、労働者には休日出勤をする義務はありません。ただし、就業規則や労働協約等において、業務上必要な場合は時間外および休日労働を命じることがある旨の規定があり、かつ、時間外・休日労働に関する労使協定(36協定)の届出が行われている場合には、36協定の内容の範囲内においてなされる休日出勤の命令は正式な業務命令となり、労働者はそれに応じる義務が生じます。ただし、この場合でも法定外休日に出勤を命ずるにあたっては、36協定の時間外労働の範囲内でなければなりません。
なお、会社から休日出勤を命じられたとしても、会社側の業務上の必要性と、労働者側の事情(仕事以外に優先すべき労働者の私的事由:冠婚葬祭、通院等)との比較によって労働者の不利益が大きすぎる場合は、労働者が休日出勤を断ることもできます。
しかしながら、買い物や友人との食事などの日常的な用事の場合は、休日出勤命令を拒否できるほどの合理的な事情とは認められないでしょう。
官民人事交流により出向した場合の雇用保険の取り扱い
民間企業等から3年間程度(最長5年間)、国の行政機関に従業員を出向させる交流採用の制度があります。経済産業省や厚生労働省など国の行政機関である府省等の職員として業務に取り組み、自らの企業にその経験を持ち帰ることになります。
形式として交流期間終了後に民間企業に戻る「雇用継続型」と任期満了後に民間企業が再雇用する「退職型」があります。
府省等の職員として職務に従事している間は、その府省等から給与が支払われ、健康保険や労災保険、年金も国家公務員等に準じて国家公務員共済組合等に加入することになります。ここで注意すべきは雇用保険の扱いです。
公務員は原則として雇用保険の適用の対象となりませんが、「雇用継続型」の交流採用の場合は雇用保険の資格を継続します。「公務員だから雇用保険には加入しない」と思い、喪失手続きを誤って取ることがないように注意しましょう。
交流採用が始まる場合は特段手続きは必要ありませんが、終了時には雇用継続交流採用終了届の提出が必要となりますので提出を忘れないようにしましょう。
雇用保険番号を複数持っていて、個人番号が登録できない時の対処法(2)
雇用保険番号を複数持っている場合の訂正の仕方は、ハローワークに「雇用保険被保険者資格取得等届訂正願」を提出します。これは電子申請はできず、ハローワークに紙で提出する必要があります。「統一事項」の誤(旧)の欄に古い雇用保険番号、正(新)の欄に新しい雇用保険番号を記入します。添付書類は雇用保険被保険者証など新旧の雇用保険番号が分かる書類になります。
雇用保険番号を複数持っていることが分かっているが、その番号が分からない場合は、現在の分かっている雇用保険番号を正(新)の欄に記入し、余白や他の欄にこれまで務めたことのある社名を記載することで、統一の手続きを行えます。また、事業所ではなくご本人が直接ハローワークに行き、雇用保険番号の統一をすることもできます。この場合は古い雇用保険番号を確認できる書類はあるに越したことはありませんが、なくても問題ありません。
雇用保険番号に連携されていた個人番号は、雇用保険番号の統一を行っても自動で新しい番号に連携はされません。そのため、古い雇用保険番号に個人番号が連携されていた場合、新しい雇用保険番号に個人番号を連携する手続きが必要になります。
雇用保険番号を複数持っていて、個人番号が登録できない時の対処法
雇用保険の被保険者にそれぞれ振り当てられる雇用保険番号ですが、複数の雇用保険番号を一人で持っている場合があります。入社時に会社側は雇用保険番号を確認し、その番号で雇用保険の資格取得を行いますが、自分が雇用保険に加入していたことを知らない方や失念している方は「雇用保険に加入したことはありません」と会社に言ってしまい、会社側が新規取得として手続きを進めることがあります。
これは都道府県によって異なりますが、雇用保険の手続きを行うハローワークでは、その方が本当に雇用保険に加入したことがないかはあまり確認しません。その結果として同じ人が雇用保険番号を複数持つことが起こります。雇用保険番号取得の手続きが終わってから、いざその雇用保険番号と個人番号を連携させようとしても、同一の個人番号は異なる雇用保険番号と連携できないので、この時点で同一人物が複数の雇用保険番号を持っていることが判明します。
このようなケースが起こった場合の対処法について、次回説明したいと思います。