お知らせ

健康保険証はどうなるのか?

 令和6年12月2日より従来の保険証が廃止になり、マイナンバーカードを保険証として利用するマイナ保険証に本格的に移行します。

 「これまでの保険証は使えなくなるのか?」や「マイナンバーカードを持っていないけど、どうなるのか?」といった疑問をお持ちの方も多いかと思います。目前に迫った健康保険証の廃止について解説していきたいと思います。

 まず、現在の保険証は令和7年12月1日までは使用できます。ただし、これは健康保険の資格が変わらないことが条件です。

 今までも退職して健康保険の資格を喪失した時はそれまでの保険証を使えなくなりましたが、それと同様に今持っている保険証も資格を喪失すると使えなくなります。資格を喪失しなければ、1年間はこれまで通りに健康保険証を使うことができます。

 では、資格を喪失して新しい資格で健康保険を利用したいが、マイナンバーカードを持っていない場合はどうなるのでしょうか?

 次回はマイナ保険証の代わりとなる資格確認書について説明したいと思います。

育児休業中の傷病休職および傷病手当金の請求について(2)

 次に、育児休業期間中における私傷病による休職についてですが、多くの会社では、就業規則に休職制度を設け、勤続年数に応じて休職期間の長短を定めています。しかし、そもそも私傷病による休職制度は、労働基準法等労働関係法令に基づくものではないため、会社として休職制度を設ける義務はなく、設ける場合でも休職事由、休職期間等については、会社の裁量で決めることができます。なお、休職制度は就業規則の相対的記載事項です。常時使用労働者数10人以上で就業規則を定める会社で当制度を設けた場合には、その休職事由、休職期間等については就業規則に定めて労働者に周知しなければなりません。

 ところで、私傷病による休職制度を設けている会社において、労働者が育児休業期間中に、私傷病による休職事由が発生したり、逆に私傷病による私傷病休職中に出産による産前産後休暇、育児休業、介護休業などが発生したりすることもあります。産前産後休暇、育児休業、介護休業は法律上の休暇・休業制度であり、それを事由として不利益取扱いはできません。

 他方、私傷病休職は会社の就業規則に基づくものなので、就業規則の定めにより休職期間満了までに職場復帰できない場合は、自然退職とすることも可能です。したがって、休職期間中に産前産後休暇、育児休業、介護休業が発生した場合でも、解雇ではなく療養継続中の休職期間満了による退職は問題ありません。

 以上の点を踏まえると、就業規則に私傷病による休職期間を定める場合、産前産後休暇、育児休業、介護休業期間中に私傷病休職事由が発生した場合の取扱いに関しては、重複期間部分について私傷病休職の請求権は発生しないとするのか、それとも重複期間を超えて休職を要する場合、重複期間分を延長するのか、などを定めておく必要があるともいえるでしょう。

 また、私傷病による休職期間中に産前産後休暇、育児休業、介護休業となった場合に、休職期間を中断するのか否かについても同様です。

育児休業中の傷病休職および傷病手当金の請求について

 育児休業中の傷病により傷病手当金と育児休業給付金は併給できるのか、また育児休業中に傷病休職請求はできるのかを考えてみたいと思います。

 雇用保険法の雇用継続給付としての育児休業給付金は、出産後も離職することなく、原則として満1歳未満の子を養育するために育児休業している雇用保険の被保険者の生活保障のために支給される保険給付です。保育所待機等一定の条件に該当した場合には、最長2歳まで育児休業期間が延長され、その間は育児休業給付金の支給期間も延長されます。

 他方、傷病手当金は健康保険の被保険者が私傷病で継続して3日間の待機期間終了後、引き続き働くことができずに休業し、賃金の支払いを受けることができない場合に休業第4日から休業期間中の生活保障のために支給される保険給付です。

 育児休業給付金及び傷病手当金のいずれも、休業期間中の被保険者の生活保障を目的に支給されるものですが、異なる保険制度に基づくものであるため同時に支給を受けることができ、その金額が調整されることはありません。

 厚生労働省の通達(平4.3.31保険発第39号・庁分発第1243号)によれば、「傷病手当金または出産手当金の支給要件に該当すると認められる者については、その者が育児休業期間中であっても傷病手当金又は出産手当金が支給されるものであること。なお、健康保険法の規定による傷病手当金又は出産手当金が支給される場合であって、同一期間内に事業主から育児休業手当等で報酬と認められるものが支給されているときは、傷病手当金又は出産手当金の支給額について調整を図ること」となっています。

介護離職防止のための制度の周知の強化について(2)

 介護休業法が改正され、事業主は雇用する労働者に対する介護休業に係る研修の実施や介護休業に関する相談体制の整備措置などを講じる必要があります。

 相談体制の整備は中小企業にとっては負担となる可能性がありますが、専門家は「母親が認知症になったと言ってきたら『地域包括支援センターに行きましたか』といったやり取りだけでも相談になる。上司や人事などに相談できる仕組みがあれば問題はない」と言います。

 人手不足が叫ばれる中、介護離職をさせないための対応がますます重要になります。法改正の趣旨を踏まえた社内の整備を急ぐ必要があります。

介護離職防止のための制度の周知の強化について

 今国会で介護休業制度に改正がされ、その趣旨は「仕事と介護の両立支援制度の周知の強化」にあります。

 今回の改正のポイントは次の二つです。

  • 家族の介護の必要性に直面した労働者が申し出をした場合に、事業主が、両立支援制度等に関する情報を個別に周知し、意向を確認することを義務づける

 

  • 介護保険の第2号被保険者となる40歳のタイミング等に、事業主が労働者に対して、介護に関する両立支援制度等の情報を記載した資料を配布する等の情報提供を一律に行うことを義務づける

 

 さらに、今回の改正では介護休業等の申し出を円滑に行うための雇用完了に関する措置も事業主に義務付けられました。

 この点については次回、確認したいと思います。

雇用保険法の改正のポイントと影響(3)

教育訓練受講中の生活給付の創設

 現在は労働者が在職中に自発的に職業に資する教育訓練を受けるために休暇(教育訓練休暇)を取ったりして仕事を離れても、訓練期間中の生活を支援する仕組みがありません。そこで、被保険者期間が5年以上ある者が無給の教育訓練休暇を取得した場合、教育訓練休暇給付金として賃金の一定割合を支給することになりました。給付内容は被保険者が離職した場合に支給される基本手当と同額で、給付日数は被保険者期間に応じて90日、120日、150日のいずれかとなります(2025年10月1日施行)。

その他

 以上の他、受講費用の一部が支給される教育訓練給付金においては、一定の要件を満たせばさらに10%が追加支給されることになりました(2024年10月1日施行)。現在、再就職に伴って支給される就業手当の廃止や就業促進定着手当の上限を基本手当の支給残日数の20%(現行は40%)に引き下げるなどの改正もあります(2025年4月1日施行)。また、失業中の受給資格者が認定期間中に働いて収入を得た場合の基本手当の減額規定が削除されました。

雇用保険法の改正のポイントと影響(2)

被保険者期間の計算の見直し

 被保険者の適用拡大に伴い、被保険者が失業した場合に支給を受ける基本手当(失業手当)の受給要件の見直しも行われました。基本手当の支給を受けるためには、離職日から遡って前2年間に雇用保険の被保険者であった期間が12カ月以上(会社の倒産、解雇、雇止め等の理由により離職した場合は離職日前1年間に6カ月以上)なければなりません。現行法での「被保険者期間1カ月」とは、賃金の支払いの基礎となった日数が11日以上ある月または賃金の支払いの基礎となった労働時間数が80時間以上である月をいいます。改正法では、「賃金の支払いの基礎となった日数が6日以上ある月」または「賃金の支払いの基礎となった時間数が40時間以上ある月」を被保険者期間1カ月とすることになりました。

 

給付制限の見直し

 現在は自己都合で退職した者が基本手当を受けるためには、原則として2カ月間の給付制限期間が設けられており、その間は失業していても基本手当の支給を受けられません。しかし、今回の改正では給付制限期間を1カ月とし、失業期間中や離職日前1年以内に、雇用安定及び就職促進に資する一定の教育訓練を受講した場合には、この給付制限が解除されます(2025年4月1日施行)。これにより、失業中でも一定の生活費を確保しながら教育訓練を受けられ、転職に有利に展開することが可能となります。ただし、5年間で3回以上自己都合で離職した場合の給付制限期間「3か月」についての変更はありません。

 

雇用保険法の改正のポイントと影響

 雇用保険法が2025年4月1日以降順次施行となりますが、被保険者の適用拡大、給付制限の見直し等、企業および労働者に影響があるものとなっています。

まず、これまで雇用保険の加入対象でなかった方も対象になる改正が行われました。

 現在、雇用保険の被保険者となるには、①1週間の所定労働時間が20時間以上であること、②31日以上雇用される見込みがあることの2つの要件を満たさなければなりません。しかし、週の就業時間が20時間未満の労働者が増加していることなど、働き方や生計維持のあり方の多様性が進展するなかで、雇用のセーフティーネットを広げるために、「週20時間以上」から「週10時間以上」に引き下げることになりました(2028年10月1日施行)。

 これにより、最大500万人程度が新たに雇用保険の適用を受けることが見込まれます。パートタイマー等の短時間労働者となる雇用者が増えることにより、法定福利費の負担が一層増えることになります。

 

採用した従業員から身元保証書の拒否があった場合、採用取り消しは可能か?

 身元保証書の提出義務は、たとえば、内定通知書や就業規則の「採用」の条項に身元保証書を提出書類として定め、さらには「入社日前日までに提出しない場合は内定を取り消す」または「入社日から2週間以内に提出がない場合には採用を取り消す」などの提出期限を定めておくべきでしょう。

 なお、身元保証書の提出を拒否し、解雇が有効となった判例としては、シティズ事件(東京地判/平成11.12.16)があります。この事件では、会社は金銭を扱うので、横領などの事故を防ぐために、社員に自覚を促す意味も含めて身元保証書の提出を採用の条件としていました。裁判所は、身元保証書の提出しないことは、「社員としての適格性に重大な疑義を抱かせる重大な服務規律違反又は背信行為」と判断し、解雇を有効としています。このように争った場合には、会社としては身元保証を求める理由を整理しておく必要もあります。

 身元保証書を求める場合に注意すべき点として、身元保証期間と損害賠償の限度があります。身元保証期間を定める場合は上限5年、定めがなければ3年とされ(身元保証に関する法律第2条第1項)、自動更新の規定は無効となります。期間満了後も身元保証人を必要とする場合、その都度、身元保証契約を締結しなければなりません。また、2020年民法改正により、身元保証書(身元保証契約)に損害賠償を定める場合には賠償額の上限(極度額)を定めなければならいことになり、その定めがない身元保証書は無効となります(民法465条の2)。これは、無制限に損害賠償責任を負う恐れがあることに対して身元保証人を保護するためのものです。極度額としては、裁判例によりますが100万円から年収分などとすることが多いようです。

採用した従業員から身元保証書の拒否があった場合、採用取り消しは可能か?

 従業員の採用に伴い、身元保証書の提出を求める会社があります。身元保証書は、採用された者の学歴、職歴等を含めた人物保証をするためのものです。また、横領や機密漏えい、不法行為などにより故意に企業に損害を与えて損害賠償請求が発生した場合で、本人の支払い能力を超える場合に保証人への請求を可能にすることも目的としています。最近は、従業員が突然、出社せず音信不通になったり、行方不明になったりする事案も有りますので、緊急連絡先として身元保証人を連絡先としておくことも必要です。

 身元保証人の人数は1名とするのが一般的ですが、会社によっては2名求める場合もあります。たとえば、1名は「親族」、もう1名は親族以外で「独立した生計を立てている人」などです。しかし、人によっては、身元保証人となる親族などがいない場合もあります。このような場合には、民間会社やNPO法人などの有料の身元保証人サービスを使い身元保証人を立てることもできます。

 では、身元保証書の提出を強制することができるかというと、労働基準法では身元保証についての定めはないので、法的根拠をもって強制することはできません。他方、会社にも「採用の自由」がありますので、身元保証書の提出を強制できなくても、提出しない者を採用しないことはできます。

 ただし、採用を内定した者や試用期間中の者に対して、身元保証書の提出しないことを理由として採用を取り消す場合は解雇扱いとなりますので、正当な理由なく内定取消または解雇することはできません。したがって、その根拠として就業規則等に身元保証書の提出義務が定められていることが前提となります。

 具体的な注意点や、実際の事例などを次回確認したいと思います。

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