休日出勤を命じた社員がその日に年次有給休暇を請求した場合、その請求は有効なのか(2)
次に、年次有給休暇についてですが、年次有給休暇とは「労働日において労働義務を免除するもの」であり、労働者の勤務形態や勤続年数に応じて、一定の日数を与えなければなりません。したがって、労働義務のない所定休日に年次有給休暇を申請する余地はありません。休日出勤を命じられたとはいえ、休日と定められた日はあくまで「休日」であり、「労働日」に代わったとの解釈は成立しないのです。
また、年次有給休暇の発生要件として、全労働日の8割以上出勤していることが求められます。この「8割以上出勤」を判断するときの分母となる「全労働日」とは、労働義務が課せられている所定労働日のことであり、就業規則等で定めた休日を除いた日数のことです。所定休日に労働させた日は含みません。したがって、休日出勤した日は労働日ではないことになります。
以上のことから、会社として休日出勤を命じた日に年次有給休暇の取得請求を受け入れる義務はありません。
業務上必要な休日出勤に係る業務命令に対して正当な理由なくこれに従わない場合であれば、就業規則に照らして懲戒処分の対象とすることができます。ただし、懲戒処分を行う場合には、前述のとおり、会社としての休日出勤命令の妥当性や、労働者が拒否した理由の正当性等を十分に確認したうえで行う必要があります。 休日に働かせるわけですから、休日労働には、通常の残業にも増して、前日のような高度の必要性が要求されます。