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業務改善助成金(6)
業務改善助成金についての設備投資について、いくつかの注意点が挙げられます。
- 設備投資等の合計額が10万円以上になること
一つの価格が10万円未満の設備投資等であっても、他の生産性向上に資する設備投資等と合わせて10万円以上となる場合は認められます。
- 納品は交付決定後であること
交付決定前に納品されたものは対象となりません。発注、デモ機の試験使用は交付決定前でも差し支えありません。
- 設備の単なる更新は対象とならない
既存の設備より高い能力と有するものを導入する場合や、増設による生産性の向上が認められる場合は対象となります。
以上が主な注意点になりますが、この他にも様々な注意点がありますので、設備投資を考えており業務改善助成金の申請を検討する場合は、事前に慎重な準備を行う必要があります。
業務改善助成金(3)
前回、業務改善助成金の対象となる方は、「事業場内最低賃金の労働者もしくは賃金を引き上げた場合に賃金額が追い抜かれる労働者」であると説明しました。以下は前回の例です。
Aさん 時給1020円
Bさん 時給1000円(事業場内最低賃金)
Cさん 時給1030円
30円コースの場合、Aさんは新しい事業場内最低賃金の1030円を下回るので対象となりますが、Cさんは下回らないので対象となりません。
この場合、Aさんの時給も30円上げないと助成の対象とはされません。Aさんの現在の時給が新しい事業場内最低賃金の1030円を下回っていますので、1030円以上にしなければなりませんが、それだけでは30円上がっておらず、助成対象の人数にはカウントされません。
事業場内最低賃金を引き上げて、下回っていた人全員を新しい最低賃金にすればその人数が助成対象の人数となるわけではないので注意が必要です。
年収の壁対策 社会保険適用促進手当(5)
年金機構からは「社会保険適用促進手当」の名称で支給するように指示されています。
これは事後的に標準報酬に間違いがないか確認する際に、算定から除いたことが分かるようにするとともに、キャリアアップ助成金の申請をスムーズに進めるためとされています。
他の名称を使用して手当を支給し、保険料の算定から除いていた場合、算定金額についての争いが起こった際にどの金額が算定から除かれていたか分かりにくくなります。このようなトラブルを避けるためにも「社会保険適用促進手当」の名称の使用をお勧めします。
また、算定から除ける上限を超えて手当を支給する場合は超える部分について別の名称の使用を推奨しています。
これもどこまでが算定の対象外となるのかといった混乱を避けるための措置となります。
社会保険適用促進手当を設ける場合は、明確に「この手当は保険料の算定から除いている」ということが分かるようにしましょう。
年収の壁対策 社会保険適用促進手当(2)
前回に引き続き、社会保険適用促進手当について解説したいと思います。
社会保険適用促進手当は、健康保険・厚生年金保険料の算定の基礎となる標準報酬月額から除くことができるものですが、これは一時的な措置となる見込みです。
対象の労働者に対して最大2年間と定められており、令和7年度末までに対象とした場合とされています。
従って令和8年度以降にこの措置を適用して標準報酬月額を抑えることはできませんし、2年を超えてこの手当を標準報酬月額の算定から除くことはできません。
最大2年間の措置となりますので、この手当を2年間で取りやめることも可能と示されています。
その場合は就業規則に「一定期間に限り支給する」旨の規定を設けるようしましょう。
このように不利益変更の問題が生じないように注意が必要です。
年収の壁対策の施策
年収の壁対策に行われる施策を確認してみましょう。
助成金、手当、扶養認定の円滑化が基本となります。
今までも非正規雇用者の正社員化や賃金の増額に対してキャリアアップ助成金による助成が行われてきましたが、新たに社会保険適用時処遇改善コースを設け、年収の壁を意識せずに働くことのできる環境整備を目指しています。
令和7年度末までに労働者の社会保険加入を進めた事業主に申請人数の上限なしに中小企業の場合最大50万円が助成されるものになります。(2年もしくは3年間助成金を受けた場合、最大50万円となり、1年間だと最大30万円になります。また、これらはすべて中小企業の場合であり、大企業の場合は3/4の額になります。)
手当等支給メニューは、手当等により賃金の15%以上を労働者に追加で支給した事業主に助成されます。
厚生労働省のイメージでは現在年収106万円の方が社会保険(健康保険+厚生年金保険)に加入し、手取り年収が90万円になるところ、手当により16万円を支給し手取り額が106万円から下がらないようにすると示されています。
2年目も賃金の15%以上の手当等を支給した事業主に助成されますが、3年目以降に賃金を18%以上増額させる取り組みが行われることが条件とされています。
そして3年目は賃金を18%以上増額させていることで助成の対象となります。1、2年目は一時的な手当での増額が認められていますが、3年目は基本給を上昇させる、それまでの一時的な手当を恒常的なものにするなど継続的な収入の増加に取り組むことが必要です。
取組後6か月ごとに申請し、1回あたり10万円が支給されますが、1、2年目は2回の支給で年20万円、3年目のみ1回の支給で10万円となります。
2年目に継続的な収入の増加を行い、3回目の申請でまとめて30万円の助成を受けることも可能です。
労働時間延長メニューは週の所定労働時間を4時間以上延ばすか、1時間以上延ばし基本給を増額させた事業主に支給されます。
取り組みから6ヶ月後に支給申請をし、30万円が支給されます。
厚生労働省のイメージでは1年目に一時的な手当を支給し、2年目に労働時間を延長する併用ケースも示されています。
最低賃金の上昇で加入条件を意図せず満たしてしまうことも考えられますので、助成金の活用を検討してはいかがでしょうか。
募集時の労働条件明示ルールの変更
職業安定法施行規則の改正を受け、令和6年4月1日より労働者の募集時に明示すべき労働条件のルールが変更されます。
新たな明示事項として、以下が追加されます。
①従事すべき業務の変更の範囲
②就業場所の変更の範囲
③有期労働契約を更新する場合の基準
①は雇入れ直後の業務内容を示すとともに、その後の業務内容の変更の範囲について明示します。
②は①と同様に雇入れ直後の就業場所を示すとともに、その後の就業場所の変更の範囲について明示します。
③は有期契約の場合の更新の有無、更新の基準、通算契約期間・更新回数の上限についての明示が必要となります。
最低賃金全国平均で1000円越えへ
7月28日、中央最低賃金審議会は令和5年度の最低賃金改定について答申をまとめました。
それによりますと、39円~41円を引き上げ目安とし全国加重平均は1,002円となります。
これは過去最高の上昇額となり(昨年は31円)、引上げ率に換算すると4.3%となります。
全国平均で1000円を超えるかが注目されていましたが、目安通りに引き上げがされれば到達することになりました。
定年後の再雇用での賃金減額について
定年後の再雇用で職務内容が変わっていないにも関わらず、基本給が半額以下に減額されたことについての最高裁判所の判断が示されました。
高等裁判所は月額16万円~18万円だった基本給が再雇用後に8万円強となったことが労働契約法20条の「不合理」にあたると判断しましたが、最高裁は正社員の基本給に対して勤続給の性質だけではなく、職務給・職能給の性質も有する余地があるとし、嘱託職員の給与の性質を検討していないと指摘しています。
「正職員と嘱託職員である被上告人らとの間で基本給の金額が 異なるという労働条件の相違について、各基本給の性質やこれを支給することとさ れた目的を十分に踏まえることなく、また、労使交渉に関する事情を適切に考慮し ないまま」不合理と認めたしたとして差し戻しにしました。
最新の有効求人倍率について
令和5年5月の数値をみると、有効求人倍率(季節調整値)は1.31倍となり、前月を0.01ポイント下回りました。
新規求人倍率(季節調整値)は2.36倍となり、前月を0.13ポイント上回りました。
正社員有効求人倍率(季節調整値)は1.03倍となり、前月と同水準となりました。
5月の有効求人(季節調整値)は前月に比べ0.7%減となり、有効求職者(同)は0.1%増となりました。
5月の新規求人(原数値)は前年同月と比較すると3.8%増となりました。
定期健康診断の未受診者への対応について
会社には、使用者として労働者に対して、安全で、かつ、健康な状態で働かせなければならないとする「安全配慮義務」があります。したがって、会社はたとえ労働者が1人であっても、労働安全衛生法に基づき、1年以内ごとに1回(危険または有害業務、深夜業については6か月以内に1回)、定期的に、その使用する従業員に対して健康診断を実施しなければなりません(安衛法第66条、則第44条)。
この定期健康診断の実施によって、自覚症状の有無にかかわらず定期的に労働者の健康状態を確認し、体に異常が無いか、病気の兆候が無いかを法定診断事項に基づいて把握することができ、なおかつ仕事に対しての配慮もできることになります。労働者に定期健康診断を受診させていない会社に対しては、50万円以下の罰金が科せられることになります(同法第120条)。
なお、「定期」とは、毎年同じ時期に行うということです。原則として、前回の受診からの間隔が1年を超えないようにしなければなりません。従業員が1年以内ごとに1回の定期健康診断を受診せずに、会社もそのことを放置(黙認)していて、万が一、過重労働等が原因で従業員が病気を発症したり、病状が悪化したりすると、会社は安全配慮義務を怠っていたと判断されてしまいかねません。訴訟に至った場合には、不法行為責任を問われて損害賠償を請求されることにもなりえます。
したがって、会社としては、仕事が忙しいなどの理由で受診しない労働者をそのまま放置するのではなく、受診義務があることを説明し、前回の受診から1年以内に受診させなければなりません。
労働安全衛生法では労働者に対しても、使用者の実施する健康診断を受診する義務を課しています(同法第66条5項)。違反したとして労働者本人には特段の罰則はありませんが、会社は使用者として定期健康診断を受診しない労働者に対して、定期券診断の受診命令に違反したとして、懲戒処分を行うことができます。
受診は業務命令の一つでもあります。したがって、正当な理由もなく受診しないことについて、なんらかの処分もせずに放置していると、他の従業員も影響を受けて健康診断を受診しない者がさらに出てくる可能性もありますので、このような厳しい処分も必要と言えます。
なお、懲戒処分を検討する場合は、就業規則に定期健康診断の譴責や戒告、重ければ減給とする例もありますが、処分を科すことによって会社としてやるべき措置は講じていたということにもなります。
また会社は、会社は、定期健康診断を受けて、診断の項目に異常の所見があると診断された労働者に関して、労働者の健康を保持するために必要な措置について、医師または歯科医師の意見を聴かなければならない義務が課せられています(同法第66条の4)。そしてその必要性が認められるときは、その労働者の実情を考慮しながら、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講ずる必要があるほか、作業環境測定の実施、その他の適切な措置を講じなければならないとされています(同法第66条の5)。