お知らせ

厚生年金に加入するとどのくらい年金が増える?

 前回、社会保険に加入することで発生する保険料が賃金にどの程度影響してくるかを見ました。今回は、加入することで将来受けることのできる老齢厚生年金がどのようになるかを見ていきます。現在の年金制度での計算ですので、法改正により変動する可能性があることを踏まえてお読みください。

 まず、社会保険に加入していない場合、国民年金のみの対象となります。国民年金は最大480月加入することで満額受給することができます。現在の満額は77万7792円となっていますので、1月納付することで満額の1/480の約1620円増えることになります。

 厚生年金に加入している場合、国民年金に加え厚生年金が増額されます。例として挙げた1ヶ月の賃金が12万円の場合、厚生年金を1ヶ月納付することで国民年金の1620円+厚生年金692円=約2312円増えることになります。

 もし10年間加入した場合は1年間で277440円を将来受け取れることになります。一方国民年金のみに10年間加入した場合は194400円が将来受け取れる金額となります。

 また、将来自身で受け取る年金額が増えるのはもちろんですが、障害厚生年金・遺族厚生年金を受け取れる可能性がありますので万が一の場合の備えとなるメリットとなります。

 逆にデメリットになる場合は、配偶者の加給年金が支給されなくなる場合や、遺族厚生年金を受けることになった場合、遺族厚生年金が支給停止となることが考えられます。

 年金制度は複雑であり、加入することで逆に受け取れる金額が実質的に減少するケースもありますので、加入の際はよく注意してください。

 

年収の壁はどの程度の影響?

 昨日、いわゆる年収の壁の対策として助成金の交付や社会保険料の免除について政府から発表がありました。

 実際に年収の壁を超えるとどの程度の影響があるのか具体的に見てみましょう。

 1ヶ月の賃金が8万円で社会保険に加入していないケースと、1ヶ月の賃金が12万円で社会保険に加入したケースを比較してみます。

 1ヶ月8万円ですと社会保険料はかからないので、雇用保険料のみが発生します。雇用保険料は0.6%なので480円が控除され、79520円が所得となります。

 一方、1ヶ月12万円ですと、健康保険料5900円と厚生年金保険料10797円、雇用保険料720円が発生し17417円が控除され、102583円が所得となります。

1.5倍の賃金となっていますが、社会保険料を控除すると約1.29倍分の賃金となることが分かります。

 ここで示した金額はあくまで例であり、また所得税等については考慮していません。しかし、社会保険料の影響の大きさを感じ取っていただけたのではないかと思います。

 厚生年金に加入することで将来の年金額は増額されますが、それがどの程度の影響になるかは次回以降に比較してみたいと思います。

男性育休17%で過去最高

 男性の育児休業取得率が10年連続で増加しています。「令和4年度雇用均等基本調査」で男性の取得率は17.13%と前年度比3.16%増で過去最高となりました。

 しかし8割超の女性の取得率との乖離は大きく、以前として子育ての負担は女性に偏ったままです。

 国連児童基金(ユニセフ)は2021年の報告書で、日本の育休制度について父親に認められている期間が長いことなどを理由に世界一と評価しています。しかし、いくら充実した制度でも活用されなければ意味がありません。

 政府も育休制度の周知、取得意向確認や取得状況の公表などの義務付け、産後パパ育休(男性版産休)制度の創設など取り組みを加速させていますが、2025年に50%、2030年に85%という目標には大きな開きがあります。

 厚労省では中小企業のみを対象とした両立支援等助成金として、子育てパパ支援助成金、代替要員の確保や取得が増す周囲の従業員への手当への助成措置などもスタートさせています。

 こうした助成金も活用して、男性が育休を取得しやすい環境整備に取り組んでみてはいかがでしょうか。

加給年金の支給停止の制度改正について

 厚生年金に20年以上加入している方が生計を維持している配偶者、子がいる場合は老齢厚生年金に加給年金というプラス部分が加算されます。

 加算されるのは配偶者が65歳になるまでや子が18歳の年度末(障害のある子の場合は20歳の年度末)までとなります。

 配偶者の条件としては生計を維持していること以外に、配偶者が20年以上の被保険者期間のある厚生年金などを受けていないことが条件となっております。

 令和4年4月からの制度改正で変更になったのは厚生金に20年以上加入している配偶者の年金が支給停止になっていた場合のケースになります。

 これまでは配偶者に20年以上の厚生年金加入期間があっても、働いているため老齢年金が全額停止になっている場合は加給年金の支給がされてきました。

 改正では全額支給停止になっていても受給権があれば加給年金が支給されなくなり、夫婦ともに厚生年金に20年以上加入している方の場合、加給年金は支給されにくくなりました。

 

ハラスメント窓口の整備について

 ハラスメント防止のための措置義務の一つとして、相談に応じて適切に対応するための体制を整備しなければなりません。具体的には相談窓口を設置するということになりますが、ただ形式的に設ければよいというのではなく、ハラスメント問題解決に向けた初動対応のほか、ハラスメントを未然に防止するための重要な窓口となりますので、きちんと機能するように体制を整備する必要があります。

 まずは、従業員に対して相談窓口の存在をしっかり周知することです。そして、体面による相談だけでなく、電話やメールといった複数の方法を選べるようにすること、安心して相談できるように場所や時間帯などについても考慮しましょう。

 相談窓口の担当者の対応では、公正かつ真摯であることが求められ、ハラスメントによりうまく話せない人に対してもじっくり耳を傾けて、その意向を正確に把握する必要があります。

 相談事案に対しては、個別に適切な対応をとることになります。注意して見守る場合もあれば、上司・同僚などを通じて間接的に行為者に注意を促したり、行為者に対して直接注意するなど事案に即した対応が必要です。

 ですから、会社として相談を受けた後にどのような対応をとるか、一連の流れについてあらかじめ決めておき、必要に応じて人事部門やその他関係部署を連携を図れるようにするなど体制を整備するようにします。

パワハラによる労災の認定基準の具体例

 厚生労働省より心理的負荷による精神障害の労災認定基準が変更になったことを前回述べました。

 具体例として様々なケースが挙げられておりますが、今回はパワーハラスメントについて具体例を確認してみたいと思います。

 上司等によるパワーハラスメントでは反復継続性が心理的負荷の「強」と「中」を分けています。人格や人間性を否定するような、業務上明らかに必要 性がない又は業務の目的を大きく逸脱した精神的攻撃や無視等の人間関係からの切り離しが反復継続性を持っている場合は「強」となり、持っていない場合は「中」に該当すると例示されています。また、パワハラがあることを認識していながら会社側が適切な対応をしていない場合も「強」に該当するとなっています。

 同僚等の嫌がらせについても同様に反復継続性や会社側の適切な対応の有無により心理的負荷の「強」「中」を区別しています。

心理的負荷による精神障害の労災認定基準

厚生労働省では、9月1日に心理的負荷による精神障害の認定基準を改正しました。これは業務により精神障害を発病された方に対して、改正後の本基準に基づき、一層迅速・適正な労災補償を行っていくための措置となります。

主な改正点としては「顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた」といういわゆるカスタマーハラスメントの追加、「感染症等の病気や事故の危険性が高い業務に従事した」ことによるものの追加があります。

また、改正前は「おおむね6か月以内に「特別な出来事」(特に強い心理的負荷となる出来事)がなければ」ならないとしていたのを、「特別な出来事」がない場合でも、「業務による強い心理的負荷」により 悪化したときには、悪化した部分について業務起因性を認める」と変更されました。

具体的な例もより詳細に分かるようになっておりますので、速やかな労災補償を行うことももちろん重要ですが、そういった心理的負荷に留意していくことが求められます。

労働争議について

昨日、西武池袋本店でストライキが行われ注目を集めましたが、労働争議そのものは減少傾向にあります。

 令和4年の労働争議は270件、総参加人員は53519人となっています。前年に比べ件数は9.1%、総参加人員は11.4%の減少で過去2番目に低くなっています。

 労働争議の数が最大だったのは昭和49年(1974年)の10462件ですが、10年後の昭和59年(1984年)には4480件、さらに10年後の平成6年(1994)は1136件と急激に減少しているのが分かります。

 昨年の主な要求事項は賃金が139件(全体の51.5%)で最も多く、組合保障及び労働協約に関する事項が103件(38.1%)、経営・雇用・人事に関する事項の98件(36.3%)となっており、全体の約75%が解決又は解決扱いになっています。

 

すべての都道府県で最低賃金の答申

  • 答申のポイントは以下になります。
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  • 47都道府県で、39円~47円の引上げ(引上げ額が47円は2県、46円は2県、45円は4県、44円は5県、43円は2県、42円は4県、41円は10都府県、40円は17道府県、39円は1県)
  • 改定額の全国加重平均額は1,004円(昨年度961円)                                     ※昨年度との差額43円には、全国加重平均額の算定に用いる労働者数の更新による影響分(1円)が含まれている
  • 全国加重平均額43円の引上げは、昭和53年度に目安制度が始まって以降で最高額
  • 最高額(1,113円)に対する最低額(893円)の比率は、80.2%(昨年度は79.6%。なお、この比率は9年連続の改善)

答申された改定額は、都道府県労働局での関係労使からの異議申出に関する手続を経た上で、都道府県労働局長の決定により、10月1日から10月中旬までの間に順次発効される予定です。

男女格差にオールジャパンで対応を

日本の男女格差指数が最低順位を更新したことに触れましたが、政府は「女性版骨太の方針2023」で女性活躍を推進する観点から、東証プライム市場の上場企業を対象に2025年までに女性役員を一人以上、2030年までに女性役員比率を3割以上とする目標を掲げています。

また、女性活躍推進法の改正によって従業員300人超の企業における男女賃金差の開示が本格的に始まるなど、新たな施策も打ち出されていますがその実行力は未知数です。

勤続年数に強くリンクした報酬システムや固定的な性別役割分担意識など、長い間に染み付いた意識を変えていくことは容易ではありません。企業規模に関係なく、オールジャパンで男性中心でない多様な価値観や考え方によって企業を成長させていくことが強く求められているといえるでしょう。

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当事務所の社会保険労務士は開業前の勤務時代と通算して20年以上の大ベテランです。
したがって、実務のことはもちろん、さまざまな種類の人事・労務上の問題のご相談に乗り、解決してまいりました。
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